石膏式3Dプリンターを使った3Dスキャンフィギュアの制作

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先日、鹿児島の3Dプリンタ/スキャナ利活用研究会にてプレゼンしたものをブログ用にまとめました🎶😀

 

昨年から石膏式3Dプリンターを扱いはじめました👏

まだ扱いはじめて1年経っておらず、独学で学んでいる最中のため間違っている箇所があるかもしれません🔰😅

もしアドバイスやご指摘がありましたら、お気軽にコメントをいただけると嬉しいです✨😊

 

■そもそも石膏式3Dプリンターとは何なのか?

 

石膏式3Dプリンターとは?

 

簡単に説明しますと、石膏粉末を材料とし、形だけではなく、3Dデータの色まで印刷ができる3Dプリンターです。

上の一番左の画像がパソコンで表示されている3Dデータで、印刷を行い、色も含めて印刷をしたものが右になります。

 

◆石膏式3Dプリンターのメリット

パソコン上で彩色を行なって、色が付いた状態で3Dプリントが行えます。 

石膏粉末を使用して印刷するのでサポート材が要りません。 

印刷スピードが早いです。(1時間辺り5mm~28mm)

上の犬のモデルは横に倒した状態で印刷ソフトに配置し、2時間半ほどで出力しました。

 

◆石膏式3Dプリンターのデメリット

石膏粉末を使用しているので、衝撃を与えると割れやすい。 

水や湿気に弱く、日光の紫外線に当て続けると色が落ちてしまう。 

キメが荒く、衝撃に弱い為、厚みが薄い物や、細かい部品の印刷には向いていません。

なので、一番の使用用途としましては、観賞用、または形状確認用に向いています。 

 

 

どのようにして印刷を行うのか知らない方も多いと思うので、 
今回は、この石膏式3Dプリンターと3Dスキャナーを使用したフィギュアを制作いたしました。 

①3Dスキャン⇒②データの制作⇒ ③印刷加工までの3つの制作の流れを紹介したいと思います。

 

制作の流れについて

 

 

①3Dスキャン

 

3Dスキャンツールについて

Structure Sensor

 

様々な3Dスキャナーがありますが、 昨年の12月にこちらの3Dスキャナーを導入しました。 

Structure Sensorと言いまして、 iPadを使用して3Dスキャンを行うことができます。 

 

なぜこの3Dスキャナーを選んだのか?

 

なぜ、こちらの3Dスキャナーを選んだのか、 理由としましては、コストが安いことです。 

3Dスキャナー自体は、4万円から5万円ほどで入手できます。 

 

次に、色の解像度の高さです。

iPadのカメラを使用するので、 低価格3Dスキャナーの中では、色の解像度が高いです。 

(逆に言うとiPadのカメラに依存します。)

 

その他にも、スキャンする際のトラッキング精度だったり、 iPadを使用して3Dスキャンを行うので、

気軽に持ち運びや、 その場でデータ確認が可能なことです。 

 

デメリットとしましては、形状のスキャンに関しては荒いです。 

大まかな対象物のスキャンには向いていますが、 複雑な形状や、精密な物など細かい形状のスキャンは難しいです。 

 

フルカラー3Dプリンターを扱う上では、 色を印刷するので、色の解像度を重視します。 

また、荒いスキャンに関しては3Dソフトで修正を行うことにしました。 

 

スキャンアプリについて

itSeez3D

 

次に、スキャン方法について説明します。 itSeez3D、というiPadのアプリを使用して3Dスキャンを行います。

精度が高く、クラウド上で簡単なデータ補正が掛けられます。 

スキャン自体は無料ですが、 データの書き出しは有料で、1つのデータにつき840円掛かります。

一度お金を支払えば何度でもダウンロードは可能です。PLY、OBJ、VRML(WRL)形式が選べます。

(多数スキャンする方は月額プランで申し込んだ方がおススメです)

 

3Dスキャン(全身)

 

今回は、3Dスキャンのモデルとして、私の父を3Dスキャンしました。 右側がiPadの画面で、左がスキャンしている様子です。 

 

顔を起点に3Dスキャンを行い、人物の周りを360度回ります。 

先ほども申しました通り大まかなスキャンが得意なので、 スキャンする際のポーズについては、

腕を左右に組んだり、 前や後ろで組むなど、できるだけ体に密着させて、

隙間を与えない方が スキャンの成功率が高く、修正作業も行いやすくなります。 

ここで、急いでスキャナーを動かしてしまうと 形が壊れたり、色が拾えなかったりするので、

 できるだけゆっくりスキャンすることを心がけます。 

スキャン時間は、大体1分ぐらいです。 

 

3Dスキャン(上半身)

 

全身だけではなく、上半身のみのフィギュアも制作しようと考え、 上半身の3Dスキャンも行いました。 

上半身のみだと、スキャンする範囲が狭い分、密度も高くなるので、 全身スキャンよりキレイに形を取り込むことができます。 

 

アプリ内画面

 

こちらがスキャンを終えた物です。 形に不備はないか確認をして、 データを書き出し、3Dスキャンが終了です。 

 

 

②データ制作

 

次に、スキャンしたデータの修正作業を行います。 Zbrushという3DCGソフトを使用して修正しました。 

 

Zbrush修正画面

 

先ほどスキャンしたデータを読み込んだ状態です。 一見、上手くスキャンできているように見えますが、 

穴が空いていたり、上手くスキャンが行えていない箇所があります。 

 

手の修正

 

例えば、こちらの指の部分ですが、 形状が崩れており、3Dスキャンがうまく行えていなかったので、修正を行い整えました。 

 

耳の修正

 

また、形状のスキャンが荒く、耳の部分に穴が開いていたり、 髪の毛や襟の部分など、印刷する際に不具合が起きる箇所も修正しました。 

 

色の修正

 

形状の不具合だけではなく、 色もうまくスキャンが行えてない箇所もありましたので、 パソコン上で新たに彩色も行いました。 

 

 

こちらが修正を完了したものです。 安定性を保つため、台座も制作しました。 

修正作業時間はだいたい全身のものは30時間ほどで、 上半身のみは12時間ほど掛かりました。 

形の修正だけではなく、3Dプリント用にデータの軽量化も行っております。

 

エラーチェック

 

次に、エラーチェックソフトを使用して、データに不具合や不備はないか、 サイズは合っているか確認してデータ制作は終了です。

 

 

③印刷・加工

 

データ制作が終えたら、印刷、加工の工程に入ります。 

 

データ配置

 

まず、印刷ソフトで3Dデータを配置し、 印刷が行えるかインクや石膏などの材料をチェックします。 

ここで問題がなかったら印刷に移ります。 

 

 

印刷を行うため、プリンターの印刷スペースに石膏を敷き広げていきます。 広げ終わったら、3Dプリントが始まります。 

接着剤とインクを、0.1ミリずつ、石膏の上に塗っていきます。 こちら作業を、800回ほど繰り返して印刷していきます。 

 

印刷時間は5時間ほどでした。印刷が終わったら、3Dプリンターの中で2時間、乾燥作業が行われます。 

 

 

次に、バキュームと呼ばれる掃除機のようなものを使いながら、 石膏粉末から印刷物を取り除いていきます。 

まだ石膏が脆く、割れてしまう危険性があるため、慎重に取り外していきます。 

 

 

次に、専用のブロアー器具を使って、石膏の粉を取り除いていきます。 

この作業で、大まかな粉を取り除き、印刷物が現れます。 

次に、加工作業に移ります。  

 

 

表面にまだ細かい粉が残っているので、 ブラシとドライヤーを使って落としていきます。

 ここで粉を完全に落とさないと次の工程の接着作業に影響するので、しっかり落としていきます。 

 

 

次に、専用の接着剤を印刷物に染込ませる。「含浸(がんしん)」と呼ばれる処理を行います。 

こちらの作業をすることによって、石膏の強度を高めることができます。 

そして、印刷物の発色がハッキリ鮮やかになります。 

すぐ乾いてダマになってしまうので、迅速に処理を行うことが大切です。 

 

 

次に、硬化促進剤を吹いて石膏の接着を固めていきます。 全体的なプロセスとしてはここで完成ですが、 

印刷物の質を上げるため、さらに仕上げ処理を行っていきます。 

 

 

石膏の表面のざらつきを滑らかにするため、やすりがけを行います。 

石膏の色は、表面の1ミリしか彩色されていないため、 やすりすぎると印刷した色まで消えてしまうことがあります。 

なので、加減と確認を行いながらやすっていきます。 

最後に、やすりがけした粉をドライヤーで飛ばします。 

 

 

次に、紫外線による色落ちの防止として、 印刷物にUVコートを吹いていきます。 

 

 

仕上げに、コーティングを行います。 印刷物を蝋につけることで、ツヤと発色が良くなります。 

最後に、ドライヤーで伸ばして乾かしたら完成です! 

加工処理は3~4時間ほど掛かりました。

 

3Dプリントフィギュア

 

こちらが最終的に完成したフィギュアです。 

 

 

データ制作の注意点

 

石膏式3Dプリンターならではの制作工程でしたが、 

データ制作の注意点についても、簡単に説明したいと思います。 

 

石膏粉末が材料ということもあり、非常に脆いので、物によっては強度が足りず壊れてしまったり、先端が細くて折れてしまうことがあります。

 

 

例えば、こちらのキャラクターフィギュアの尻尾はもともと離れていたのですが、印刷することを考えて キャラクター本体に尻尾を結合させました。 

 

データ制作について

 

だいたい厚みが2~3ミリ以下だと石膏式3Dプリンターだと印刷するのが難しいので、

厚みを持たせたり、パーツ同士を結合させるなど強度を上げる工夫が必要です。 

(出力可能なギリギリの厚みを抑えたとしても、些細なことで壊れる可能性もあるので、できるだけ厚みに余裕を持たせることをおススメします!)

 

なので、印刷される形状を考えたうえでのデータ制作が重要なると思います。 

 

以上がプレゼンのまとめとなります。

文章が長くなりましたが、ここまでお読みいただきましてありがとうございました🌟🙂

 

kura

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